今回は、オーダースーツについて書いていきます。
私は過去にオーダースーツのことについて、いくつか記事を書いていますが、そこで一貫してお伝えしていることがあります。
それは、「オーダーで個性を出さない」ということ。
今回は、なぜ、個性を出さないことが重要なのか、ということについて深堀りしていきます。
オーダースーツの難しさとは
オーダースーツは選ぶことがいっぱい
オーダースーツを体験したことがない人に向けて、簡単に紹介すると、「なんでもあり」です。
スーツと聞くと、黒、ネイビー、グレー、これくらいのイメージしかないかも知れませんが、オーダーとなると一転して、ブラウン、ベージュ、グリーンなど色々な色の生地、柄の生地を選ぶことができます。
生地を選べば次は、裏地、ボタン、ボタンホール!
ポケットの数!!形!!!
というふうに「思い通りに」オーダーすることができます。
サンプルを見せてもらうと、ボタンだけでこんなにあるのか…裏地も何が違うかわからないよ…
と悩むこと必至。
わけがわからなくなって、店員さんに助けを求めることもしばしばあります。
店員さんは「とめてくれない」
お店にもよりますが、オーダースーツ店の店員さんは、基本的に「お客様ファースト」。
全国展開しているところなどは特に「お好きなものをどうぞ」とこちらに一任してくれます。
「赤色が好きなんだよね」と言えば
「裏地であれば、ちらっと見えた時におしゃれですよ」とか
「ボタンホールの色も変えられますよ」と提案してくれます。
おおそうか、店員さんが言うなら…と思ったときには、きっと注文票に書かれていることでしょう。
「個性ある」スーツは使い所に困る
今挙げたように、変わった色や柄の生地やディテールで個性を出したスーツ、というのは実際に着られる場面は少なくなります。

例えば、画像のものは私の私物です。
普段のお仕事でスーツを着る機会がどんどん減っていく中で、なかなかベージュやグリーンの生地のものを着ていく勇気はないはず。
ボタンホールや裏地で遊んだものも、「いかにもオーダーしました!」感がでるため、仮にネイビーの表地だった場合でもビジネスには不向き。
じゃあ、休日に着るか、と言われると、「わざわざ休日にスーツを着てどこへいくんだ…」となってしまいます。
実際に、私の上の画像のスーツも、過去に自分の結婚式用に仕立てたもので、普段の仕事の時にはほとんど着ません。
休日に少しいいところにお出かけする時くらいですね。これで子供と公園にはいけません。
「遊ばない」スーツの良いところは?
「遊ばない」スーツは使い所がいっぱい


画像のものはどちらも私物ですが、春秋用のグレーの無地、冬用のネイビー無地です。
ボタンや裏地では全く遊ばず、生地と同色、似た色のものでまとめています。
一見して、面白さはありませんが、その分使い所がとても多いです。
仕事はもちろん、休日にも着ることができますし、ジャケットだけ、スラックスだけ単品使いすることができます。
また、中に合わせるのはシャツやネクタイだけでなく、ニットなども合わせられるので、1つあれば、2way、3wayと活用が可能です。
「遊ばない」からこそ差別化できる
スーツは大体が黒、グレー、ネイビー。
みんな持っているからこそ、「生地の質」「仕立ての良さ」で差が生まれます。
あの人のスーツは「ネイビー」なのに、なんだか他の人と雰囲気が違うぞ?
と、いうような感じです。
「白は200色あんねん」のアンミカさんではないですが、例えば無地にも色々あります。
そういった「スーツ本来の良さ」で勝負ができる方が他の人との差は出やすいと思います。
「遊ばない」スーツはずっと使える
上の画像のようなスーツは、年齢を重ねてもずっと使うことができます。
派手さはないですが、ずっと輝き続けてくれるものです。
ボタンホールの色や裏地の色を変えたり、サイズを攻めたものは、年齢を重ねると「若気の至り」を感じてしまいます。
そうすると、生地や仕立てが仮に良いものだとしても、着る機会は減ってしまいます。
このようにして手放してしまったスーツは、私もひとつやふたつではありません。
せっかく仕立てるなら、見た目のオプションよりも、生地や仕立てにお金をかけよう
スーツのオプションは無料のものもあれば、有料のものもあります。
他の人と違うものが着たい!と思ってオプションにお金をかけるなら、生地や仕立てをより良いものにする方が良い、と思っています。
そうすれば、長く使うことができますし、結果的に満足度の高い買い物になると思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、オーダースーツについて書いてきました。
わかりやすく無地のスーツを取り上げましたが、ご自身で選ぶセンスがあれば、柄や色で個性を出すことは悪くはないと思っています。
ですが、なかなか我々プロではない身で、わずかな生地本(バンチ)から出来上がりを想像するのは難しいものです。
鮮やかで惹きつけられる気持ちをグッと抑えて、「遊ばないスーツ」を試してみてください。
以上です。ありがとうございました。